トルコはあの日からずっと日本を探している気がする。
飛行機に乗れば何時だって日本には会えるが、そういう意味ではない。
トルコ自身も上手く表現出来ないが、たぶん二度目の邂逅のイメージが強いからだろう。
初対面の感想が薄かったという事も有るが。
初めて日本を見た時の感想といえば、文字通り「薄い」である。
気配も存在感も肌の色も。
光の加減かその瞳もただ黒く、曖昧な感覚しかもたらさなかった。
こんな様でよくやっていけるなと思った程度、それ位の興味しか浮かばなかった。
そこから記憶は一気にあの事件へと飛ぶ。
遠く異国の海に塵となって消えていく我が身を情けないと思い、次に目を開けたらきっとそこはこの世ではないだろうと思っていた。
実際に目に映ったのは涙を必死に堪える日本の顔。
トルコが目を開けたことにほっとしたのか、希望を見出した目からは一筋の雫が伝って。
自分を叱咤する声に励まされ、トルコは懸命に生にしがみ付いた。
その時日本が外したであろうトルコの仮面は今も大事にとってある。
見ると消えていった仲間のことが頭をよぎっては後悔の念に駆られるが、不謹慎にもそれ以上にあの時の自分だけを見る日本が忘れられない。
トルコの血が騒ぐのはもう見せなくなった日本の戦人としての血を求める目であるが、それとはまた別の意味で、トルコの背筋を震わせる。
自分だけしか考えていない瞳。
近年、方々に糸を張り巡らせて様々な国を観察するそれではない。
野心や策略を含んだそれでもない。
きっとアメリカやイギリスも見たことは無いだろう。
いつか、自分はその目を彼から与えられるのだろうか。
彼は、狂おしいほどに自分を求めてくれるだろうか。
(もう、一度)
自分が、そう思っている程に。
トルコは日本の中に、日本を捜している。
08 夜捜
(夜を捜す)