青春模様 ♯2

次の日、菊と一緒にこそこそと一つ上の上級生の階まで見に行ったが、間違いなかった。
ギルベルト・バイルシュミット。
この辺じゃ有名の不良である。
菊はギルベルトの姿を蔭から見て目を煌めかせていたが、実を言うと彼はフランシスの悪友でもある。
いくら幼馴染で一緒に登下校していても、持っている友達の範囲はお互いに被ることなく違っている。
さて、ここでフランシスは何とも言えない立場に立つことになってしまった。
本来なら幼馴染のサポートをすべきなのだろうが、如何せん相手が悪い。
ギルベルト・バイルシュミットには数年来の、片思いの相手がいる。
その相手の好きな人は傍から見ても明白だというのに、ギルベルトは彼女を追い続けている。
(・・・お兄さんどうすりゃいいのさ)
ため息をついても答えてくれるものはいなかった。

「フランシス、協力して下さいね!」
純真な笑顔で言われたら、フランシスにはウィと答えることしかできないことを、この幼馴染は良く知っている。
フランシスとギルベルトが知り合いと知った途端、菊は身を乗り出してこう言った。
そして、菊とフランシスの挑戦の日々が続く。
「あいつの趣味は・・・長髪・・・」
「これはオッケイです!」
「強いやつ・・・」
「任せて下さい、今なら耀兄さんにも勝てそうです!」
「・・・・・・巨乳」
「・・・お、大きくなりますもん!」
恋愛なんて、駄目でもともと、でしょう?
菊と違い、今まで沢山の恋愛を繰り返してきたフランシスの言葉に、菊は笑って言う。

「あ、あの・・・!」
「んあ?」
この間は助けて頂き有難うございました私一年の本田菊と言います宜しければお名前を伺っても構いませんか!?
真っ赤になりながらもノン・ブレスでこう言い切った菊は、フランシスに助けられながらもギルベルトの名前を聞くことに成功した。
その日の夜は、菊がおせち並みの料理を作って大変だった。

下駄箱で待ち伏せし、偶然を装って初めてギルベルトと菊とフランシスで帰った日は、菊は頑張って会話をしていた。
「本田って面白いやつ!」
「っ!いえ、それ程でも・・・」
初めて名前を呼ばれた菊は、ギルベルトに笑われながらも幸せそうだった。
ちなみに、その日菊はケーキをホールで一つ食べきった。

今までひざ丈だったスカートを、菊は少し短くした。
セミロングでも美しかった菊の髪は、さらに美しくサラサラになって肩甲骨の辺りまで伸びた。
たまに、フランシスと二人で一時間かけて決めたヘアピンを付けていることもある。
昔から大人しかった娘だったが、最近は少し明るくなったと誰もが言う。
石鹸の香りが、ささやかな香水の香りに変わった。
時に不安になったり、神社に願掛けに行ったり。
フランシスから見た菊は、どこにでもいる、恋する少女だった。
「フランシス!」
記憶の中のセミロングでスカートをふわりと揺らす菊ではなく、黒い髪を輝かせ白い足を見せた菊が、真夏の光の中、笑っている。
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ロデ←エリ←ギル←菊という見事な関係(^p^)




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